【読書メモ】基礎から学ぶプロマネ技術必須マニュアル
基礎から学ぶプロマネ技術必須マニュアル
著者:小浜 耕己
発行:日経BP社
1. 本の構成、読者層
第1章 プロジェクト・マネジメントとは
第2章 プロジェクト・マネジメントの勘所
第3章 常識に潜む落とし穴
第4章 究極の2人に見る落とし穴
1章、2章にてプロジェクト・マネジメントの共通要素を解説
3章、4章にて事例によって多様性を解説
読者層としては、PMという職となる人、設計、コーディングを担当しない人を
想定しているものと思われます。
プロジェクトの規模としては大きめで、10数チームを束ねるプロジェクトをイメージしました。
プロジェクト管理を始めたがうまくいかないと言う方は、章節とキーワードをまとめているので、参考になりそうな箇所がありましたら、是非読んで頂ければ、ぶつかっている問題を解消できるかもしれません。
2. 内容別メモ
第1章 プロジェクト・マネジメントとは
1-1 プロマネの仕事とは
「設計リーダー」ではダメ 先を読む力を身につけよう
→サブリーダーや右腕候補を見つける
プロジェクト遂行上の課題を解決する
→PDCAサイクルの「Check」のタイミングを前倒しする
1-2 キックオフから振り返りまで
- プロジェクトの基本は、メンバー全員が主役になって成功を目指すこと。
「キックオフ・ミーティング」→ 目標、体制、役割分担を共有
アンチパターン:曖昧さ、「やらされ感」、迷走するメンバ
「進捗会議」→ 必要に応じ開催、進捗状況・課題とそれに対する解決策の合意形成
アンチパターン:「無難」な報告、情緒的・楽観的報告、解決策・担当者が不明な課題
「舵取り会議」→ 部門を横断するような大きな課題と解決の合意形成
アンチパターン:メンツの対立、引きづられる過去、情緒・感情に流される
「振り返り」→ PJで得た知見・ナレッジを組織の財産とする
アンチパターン:悪いことを振り返らない、当たり障りのない内容に留まる、抽象的な表現
1-3 よい計画、ダメな計画
- 成り行き任せはダメな計画→「モノづくり」の計画だけではなく、ユーザーレビュー、検証、教育など、「使えるモノにする」ための計画を組み込む。
- スケジュールだけではQCDは担保できない
- 「失敗の可能性」を前提に対策を計画する→「うまくいかない」可能性を考えて計画の実効性を評価し、見直すための仕組みを組み込む。
1-4 プロジェクトの遂行管理
- 発生した事象の原因やプロジェクトへのインパクトを含めて、現状を客観的に把握する。
- 実施する対策の6W2Hを明確にし、課題解決までトレースする。
- 意欲や体調にかかわるメンバーのサインを読み(情報感度を高める)、メンバーに働きかけるときは相手の反応を予測しておく。
1-5 プロマネの七つ道具
- 目的・目標・スコープ定義(制約事項を明記、優先順位の決定の物差しに)
- 組織・役割分担・会議体定義(役割定義、コミットできる人)
- 遂行スケジュール(完了基準を明記、イベントを記載)
- 進捗管理帳票(数値、具体的、心配を共有)
- 変更管理帳票(インパクトを可視化、経緯を記録)
- 課題管理帳票(期限と担当を明記、ルールを明確に)
- リスク管理帳票(発生確率・影響を明確に)
第2章 プロジェクト・マネジメントの勘所
2-1 プロジェクトの成功と失敗
QCDに限定した成功条件では不十分、多目的な視点で目的・目標を決め、計画に盛り込む。
- プロジェクト全体を「白か黒か」と決め付けず、目的・目標をブレークダウンして成功、失敗を評価する。
- プロジェクト本来の目的を合意した上で文章化し、手段が目的にすり替わらないようにする。
- 多面的な視点(人、物、金、等)で成功の条件を考えて計画に組み込み、成功の評価(測定)方法を事前に定義しておく。
2-2 プロジェクトにおける合意形成
- 質問や意見をあらかじめ想定して合意形成の筋道を考え、筋道に沿って進めるためにアジェンダなどの資料を用意する。
- ステークホルダーの立場や現状の問題点、解決策について情報収集し、仮説を磨き上げる。
- 「本音を探る質問」などを活用し、部分的な合意を積み上げていく。
2-3 プロジェクトのリカバリ
- 「お忍び」でやらずにリカバリすることの意義を明確にし、合意を取り付ける。
- 短期間でダメージ査定を行って、事態を見えるようにする。
- 元のプロジェクトにしがらみのない担当者や、プロジェクトを救うために何を捨てるか判断できる上位の意思決定者を集め、知恵と力を立て直しに集中する。
2-4 プロマネのスタイル
親分肌、親和派、分析屋の3つのスタイルの失敗・苦戦がストーリー仕立てで記載されている。
- 借り物やステレオタイプのスタイルでは、さまざまな局面に対応できない。
- 経験やスキルの裏付けがなく、仕切り方だけを考えても上手くいかない。
- 情報を集める、判断する、優先順位を考えて実行に移すといった局面では、重要度に応じてスタイルを変える。
第3章 常識に潜む落とし穴
3-1 スコープ凍結と計画重視の落とし穴
- 「Not, Because」「違います、なぜなら」は対立のものと →「Yes,but」「そうですね、しかし」と応じよう
- 目的に応じでスコープはコントロールするもの
- 計画に対する関係者のコミットも重要だが、一存で全てを決めることに固執しない方がよい場合もある。
- 計画を変更する場合の計画を立てておく
3-2 数字で可視化の落とし穴
- 数値化するだけでなく、計測の目的、タイミング、評価方法、リカバリ・アクションなどを明確にしておく。
- 押し付けではなく、知識の共有を
- 目標値だけではなく、精度を高める管理手順も併せて明らかにする。
- プロジェクトの性質にあわせて、メリハリをつけ効率的に可視化する。
3-3 リーダーシップの落とし穴
- プロジェクトメンバーのスキル、知識、決定力を活かす。
- メンバーを引っ張るだけではなく、権限を譲渡しパフォーマンスを引き出しメンバーを育成するのもリーダーの役目。
- 常に答えを与えるのではなく、メンバーから解決策を引き出す動きも必要
3-4 目的・目標の明確化の落とし穴
- 目的の達成に至る道は一本ではなく、段階的達成もある。実現できない最適解ではなく、 勝算のある現実解をめざす。
- マネジメントは正誤や勝ち負けではない。「正論で勝つ」のではなく「関係者を動かして結果を出す」ための戦略を練る。
- 働きかける相手の立場を考慮し、働きかけの方法を吟味する。
3-5 正確・客観的・主体的な報告の落とし穴
- 対策を立案して報告することは重要だが、とりあえず事象を報告する「第1報」もタイミングよく上げる必要がある。
- 原因を追究するのは大事だが、その時点で必要なレベルや重要度を考慮するのが先決。
- 複数の要因から成る問題の調査は、シリアルに進めるだけが能ではない。並走によるスピードアップも考える。
- 報告には定量情報だけではなく、定性情報も必要。
3-6 リスクの明確化と共有の落とし穴
- リスク管理では、はっきり目に見えるまえの「不確実なもの」も管理対象とする。
- リスクは、「発現可能性✖️インパクト」で評価し、当面ヘッジできないものもリスクとして管理する。
- リスクは必ずしも全員で共有できない。共有できるかどうかよりも対処できるかどうかを優先する。
- 回避するための策と合わせて、「発現した場合の軽減策」も考え、あらかじめ準備する。
第4章
4-1 課題管理の落とし穴
- 課題にも色々ある。重要度によってメリハリを付けることが必要。
- 厳密に分類管理することより、「漏れを無くす」ことを考えてのりしろを付けておく。
- 手元やプロジェクトの特性に応じたテーラリングを施す。関係者が理解でき、実効を上げられる運用を。
4-2 変更管理の落とし穴
- 変更管理だけではなく、検証作業まで含めたインパクトや総合的なリスクを判別する。
- 「見つかる都度」一本槍ではなく、「ついで変更」「まとめて修正」などの効率化手段も考慮する。
- 代替策など、ユーザーが合意できるような手段も併せて検討・提案する。
4-3 役割分担の落とし穴
- プロジェクト・チーム内だけではなく、営業担当者や部門長とも役割分担して、組織として仕事ができるようにする。
- 役割分担とは、壁を作って閉じこもることではない。主体的に進めると言う意識を忘れずに。
- 「事が起こる」前から情報を共有できるようにしておく。共有の方法は、局面に応じて工夫する。
3. (将来)活用
プロジェクトマネジメントの全体像を把握するのに良いと思われる。
感触としてハードスキル7割、ソフトスキル3割の割合で書かれているように感じた。
同じ見た目のシリーズの、wbsなどとセットで読み合わせると良さそう。
自分は、作業とマネジメントを切り離すのが上手くいかず活かせずにいる…